<5話-1>
撮影は次の土曜日も桃奈の部活が無かった為、週末には智紀と桃奈は瑠夏の撮影モデルとなった。
二回目の撮影は最初の日のように過激なものはなかった。これは衣装の露出も少なく、またキャラクター的にも過激なことを
しないという設定だったというのもあるが、撮影後にお姉さんが使うから、という理由もあったようだ。
もっとも智紀も桃奈も先に帰ってしまったので、そのお姉さんの姿は見られなかったのだが。
そして一週休んでから次の日曜日もまたコスプレの撮影が行われた。晴れた日曜日なのだからどこか別の所に出かけたいと智紀
は思っていたが、そんなことにはおかまいなく瑠夏は智紀を呼び出す。もう何も文句を言う気も起きずに、智紀はただ従って瑠夏
に付き合った。
瑠夏は先にマンションにいるからと連絡があったので、智紀は一人で駅から歩いた。すっかり慣れてしまったが、慣れたくもない
ものだと智紀は溜息をついた。
「おはよ〜」
部屋ではすでに瑠夏がライトのセットをしていた。
「桃が着替えてるから。着替えはそこね」「今日の服は何なんです?」「うん、チアリーダーの服。この辺はまだ作ってなかったし」
「しかし先輩、そんなに作って自分じゃ着ないですよね」
「ああ、そうね。たまに着ようとは思うけど、最近智紀くんと桃のサイズに合わせちゃってるからなぁ」
瑠夏はちょっと考えて「たまにはいいかもね。智紀くん、カメラ得意?」と訊く。
「得意って程じゃないですが、機種の操作教えてくれればわかると思います」
「じゃぁ今度は頑張ってみるかな。冬のイベントもそろそろ考えないといけないし」瑠夏はそう言って頭に浮かんだ妄想を膨らませ
ていた。

「前から思ってたんですが、今まで作っていた僕らの服取ってあるんですか?自分で着られない服だらけになると思うんですが」
「ああ、あれね。気に入ったのはとってあるけど、大体オクに流すか知り合いにあげちゃうわ」
「そうなんですか」そういう世界での需要はあるのだろう。まして裁縫に関しては素人の智紀が見ても、瑠夏の作ったコスチュームは
しっかりした作りだったし、素材にも凝っていた。きっと欲しがる人も多いに違いない。
「はい、じゃぁそろそろ着替えて」「はい」
いつも着替えに使っている部屋をノックする。
「智紀?」「そう」「もういいよ」
ドアを開けると桃奈はすでに着替えてソックスを直していた。
「あ、キャンノーのハルミ?」「うん私のキャラじゃ、やっぱりそうでしょ」「だよね」と智紀と桃奈は笑う。こんなのにも慣れて
しまったなぁと智紀は複雑な気持ちになるのだが。
ここでの撮影が始まってから瑠夏が『コスプレするならキャラを知ってほしいから』と予習用に漫画やDVDを貸してくれたのだが、
律儀にそれらに目を通していた智紀は次第に楽しんでいた。
そんなにアニメやゲームに興味はなかったのに、元々運動も苦手なインドア派としては馴染みやすかったのも確かではある。
だが、近頃撮影での楽しみはそのキャラクターのコスをした桃奈を見られることだった。
もっともそれも初回のようなことが無ければの話である。勿論、桃奈にあんなことをしてもらって気持ちよかったが、無理矢理瑠夏が
やらせたのだから、やはりわだかまりは智紀にもあった。
桃奈に対して後ろめたい気持ちもあるのだが、桃奈はあれ以降も特に変わった素振りは見せず、いつものように明るく接してくれた。
でもやっぱり傷ついているよなぁ〜と智紀は思うのだが、だからといって何が出来るものでもない。自分の無力さを実感する日々であった。

「えー、じゃあ今度は二人のからみで。ソファに二人で座って」一通りピンでの撮影をしてから、いつものように嬉々として瑠夏は
ポーズの指示を出す。ソファに並んで座る智紀と桃奈は、瑠夏の撮るのに合わせて少しずつポーズを変える。
「お、いいね〜智紀くん目線くれる?」
智紀は最初はぎこちなかったが、桃奈に合わせて撮られるうちに自然とポーズも様になっていた。それは智紀も感じていて、たまにポーズが
決まったような時には進んで瑠夏にデータを見せてもらっていた。
元々三人だけのプライベートな撮影だし、こうして慣れてしまえば何も緊張することもない。
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