放課後になって俺と涼葉は校門へ。
「じゃぁ先に行ってるから」「ではまた」
 俺は先に自転車を漕ぎ出した。涼葉はバス-電車通学なので俺は涼葉の下りる駅まで自転車で行く。電車を使う距離なら
結構ありそうだが、実は直線で行くと大した距離ではないのである。逆に乗り継ぎがあるから自転車の方が速かったり
する。

 実際、俺は涼葉よりも10分ほど先に駅前に着いていた。見回して、俺と目があって安心したように微笑む涼葉は可愛
い。完全にノロケてるって思われても構わない。そう思うのだから。
 駅からは歩いて10分もしない住宅街に涼葉の家はあった。比較的新しい家だった。
「中学の最後にこちらに越してきたから」「なるほどな」
 玄関を開けて中に。
「お邪魔します」
 廊下の向こうからスリッパの音がして女の人が出てきた。髪を明るく染めて明るい笑顔。
「いらっしゃい!」
 
 なんか随分若いが・・・
「姉だよ」
「こんにちは」
「こんにちは。涼ちゃんの『おともだち』ね」
「はじめまして。高水です」俺はちょっと緊張して挨拶。
「ああ、高さん、姉には構わなくていいから」
「あ、涼ちゃんまた冷たいこと言ってー!」
 涼葉の姉は涼葉と較べると随分系統が違う感じだ。明るいというか、くだけた感じが涼葉とはまったく反対だった。
「高水くんだっけ?涼ちゃんをよろしくね」
「あ、はい」
「高さん、上に行こう」
 涼葉は先に階段を上がって行った。俺は涼葉のお姉さんに会釈をしてから続いた。

 涼葉に通されたのは涼葉の部屋・・・ではなく客間のようだった。まぁそうすぐには入れてくれないだろう。女の子だし
な。
「ちょっと待ってくれ。着替えてくるから」「おう」
 俺は座卓の前に座って待った。

 しばらくして涼葉が私服で入って来た。いつもと違って柔らかい印象になったのは服のせいだけではないだろう。学校で
は随分殻を被っているみたいだし、生徒会などでも苦労が多いと思う。
「では始めようか」
「そうだな」
 座るなり教科書を開き、俺に無駄口を叩くスキも与えない。さすがだ。
 こうして俺達の勉強会は始まった。

 この後は本当に勉強していたので特にいうこともない。俺も真面目にやっていた。涼葉のお姉さんが一度飲み物とお菓子
を持って上がってきたが、涼葉は速攻で受け取ってドアを閉めてからは二人だけだった。
 真面目に勉強はしていたが、それでも俺は悪くないと思っていた。二人でいられるということが俺には嬉しかった。
始める前にはキスとかしようかと思ったが、そんな雰囲気じゃないしもともと俺も真面目だからな・・・・(笑)

 よく一目惚れ、というのがあるが、それだと多分そこで「好き」のマックスが決まってしまうのではと思う。つまり上限
からの減点になるので、つき合っていったら悪い面が気になるんじゃないかと。もっとも恋すれば他が見えないとか言う
し、実際は減点ばかりじゃないんだろうが。
 でも俺みたいに少しずつ好きになっていくと、減点する恋よりも長く続きそうな気がする。勝手な俺の恋愛論だが、そん
なことを夢想するくらい俺は涼葉との恋にハマっていたわけだ(後でこんな話を後で涼葉にしていたら、段々嫌いになって
いくことも成り立つと言われてしまったがな)。

 こうして俺と涼葉の勉強会一日目は終わった。一日目のノルマが終わってちょっと話したけど、キスするとかそういう事
はテストが終わるまで禁止しようという決めた。好きな気持ちを抑えるっていうのは燃え上がったばかりの火を吹き消すみ
たいだが、俺達は自制するのには慣れている。
まずは二人でテストの成績を上げる、この目的が達成すればまた二人の仲が深まる気がしたのだ。
 そんなことで俺達はこうやって一週間勉強をして、中間テストを受けた。




「おつかれ!」
「よく頑張ったよ」
 テスト最後の日、午前中で終わったので俺と涼葉はそのまま涼葉の家に向かった。
 そして駅で一緒になってからコンビニに寄って弁当とかお菓子なんか買った。部活のある連中は午後から部活再開のよう
だったが、今日だけは生徒会もなく開放感に満ちた俺達は楽しく打ち上げだ。テスト期間中は確かに勉強ばかりだったが普
通に勉強以外の会話もしたし、俺としては涼葉との仲が深まった一週間だった。それでどちらともなく、テストが終わった
ら打ち上げをしようということが決まって、俺達は今ペットボトルのお茶で乾杯しているのだ。

「結果は来てからじゃないとわからないけど、手応えはあったな」
「うん。高さん意外とちゃんと勉強していたし、今回はいいんじゃないか」
「意外と、は余計だ」「失敬」
 スナックなんかをつまみながら俺は涼葉の顔をまじまじと見る。正式につき合って1週間かそこらだが、ホントに学校と
家では表情に差があるヤツだ。俺はどっちの涼葉も好きだけどな(ノロケんなって言われそうだが)。

「なにか?」
「いや、別に」
「何か言いたげだが・・・・」
 涼葉は言葉を止めて微笑んだ。そして椅子を立って俺の横に来て、頬にキスをした。
「今日から解禁だ。すっかり忘れていたとは彼女失格だな」
「それは俺もだ」俺は笑って軽くキスを返した。
 こんなイチャつき度合いでわかるだろうが、今家には涼葉の家族はいない。俺はちょっと図に乗って言ってみた。

「涼、部屋見せてくれないか?」
「へ、部屋?客間とか」「いや、ボケなくていいから。涼の部屋見せてよ」
「あ、いやいや高さん、それは難しいかもしれない」珍しく動揺している涼葉だった。
「なんか見られたくない、エロいもんがあるとか?」
「そんな物はない。ただ、突然言われても片づけていないし」
「いいよ、気にしないから。俺の部屋なんかスゲー汚ぇぜ」
「それは高さんの問題だ。一応私も女だし、いろいろ気を遣うのをわかって欲しい・・・」
 と、真剣な顔で黙ってしまったのでさすがに俺も引き下がる。そのうち見られる機会もあるだろう。

「わかった。ゴメンな」「いや、私こそすまない。こういう状況も考えておくべきだった」
なんとなく白けてしまったので、俺は話題を変えることにした。
「訊いてなかったけど涼はなんか趣味とかある?」
「趣味か。特にないな。高さんは?」
「俺もな、特にない」
 失笑してしまう。続かねーよ。

「でも高さんはスポーツ好きじゃないのか?」
「ああ、たまにテレビでサッカーとか野球はみるけど特にこれっていうのは無いし」
 涼葉は何か言いかけて思いとどまり、切り替えたように言った。
「DVDでも観ようか」「なに映画?」
「いろいろある。親が好きなんで新しいのも結構」
「おお、見せてくれよ」俺も次の沈黙が怖くて涼葉に話しを合わせた。

 リビングにはソファと大きな画面のテレビがあった。ウチとは大違いだ。テレビの横の棚には確かに沢山の映画DVDが
新旧取りそろえてあった。俺達は菓子と飲み物を持ってテレビの前に陣取った。
 映画は適当に、半年前上映していたアクション物の洋画を俺が選んだ。この映画は涼葉も観ていないというので、二人と
も楽しめると思って。
 ソファに座ってくつろぎながら大画面のテレビを並んで観るなんて、俺的には割と気に入ったスタイルだ。なんかこう、
夫婦みたいな感じか?俺は想像して笑った。

<トップ>  <4話-1>  <4話-3>