希望的な気持ちになっても、現実が悲観的に引っ張る事はある。
とりあえずデートして、俺と涼葉は近くなれたと思っていたんだが、こういうことは続けていないと薄れてしまう。
簡単に言おう。涼葉と話が出来ないんだ。まず生徒会、これはわかる。そして勉強。これも塾があるって話は聞いているし、
納得してつき合っている。しかし、実際あのデート以降、涼葉の多忙スケジュールが続いてしまって、俺が入る隙間が無いのだ。
勿論、教室で仲良く話してとかあってもいいと思うんだが、それも依然として涼葉はイヤみたいだったから、その結果として涼葉
とはまったく話していない状況だ。
今までは昼休みの弁当タイムもあったんだが、それすら無くなったって事で(昼休みは生徒会室に行く事が増えていた)
『俺って涼葉の彼氏?いいんだよね?』と寂しく自問する日が続いた。それとこういうのが続くんだったら携帯くらい買って
くれよ、と愚痴りたくもなる。愚痴を言う相手もいなんだけどな。そう、田島と浅井さん以外、誰にも話していないんだ、涼葉と
つき合ってる事は。
そうして日にちが過ぎていった。教室で顔を合わせるけど表情はいつも通りだし、なんか涼葉とデートした日が夢だったんじゃ
ないかと思った。
もっとも彼氏だって自信があればどこででも話しかけたりすればいいんだろうが、俺はその辺遠慮していた。なんか涼葉の顔
みると萎縮しちゃうところあるんだよな、なぜか。それと、俺の中で『忙しい彼女を気遣う大人な俺』っていう立ち位置を作って
いたっていうのもある。俺のわがままで涼葉の勉強の邪魔をしたくないし、そうなったら嫌われるかもしれないとか守りの意識
があったり。そんな思いが合わさって、俺は遠距離恋愛よりも遠い恋だな、と思い始めていた。
日曜日。俺は久しぶりにクラスの仲間、西谷達5人で連れだって都内まで買い物に出かけた。俺は別にファッションにこだわりは
なかったが、こいつらは結構こまめに流行なんかをチェックしてるから、俺はいろいろ参考にしてる。それと男同士でうろつくのは
気楽でいい。
モヤモヤした毎日が続いていたから、『タカ、テンション高けーよ!』とか突っ込まれることも度々なくらい、俺ははしゃいでいた。
俺達はショップのハシゴをして人通りの多い歩道をダラダラ歩いていた。
「ってやっぱあのキャップ、ゲットしておこうかなー」「アレいいか?色合わせ辛くない?」
「いや、そこは俺的に差し色でハズシの美学が」「お前のはハズシ過ぎ」
「うっそ、キビシー」「喉乾いた。そろそろどっか入んね?」
「そうだなー、じゃあのへん」「相変わらずテキトーだなカンちゃんは」
本当に適当に近くにあったファストフード店に俺達は入った。混んでいたが運良く席も空いていたので、サッサと窓際の席に座って
オーダーして、俺達は今日の戦利品なんかをごそごそと出してみたり語ったり。俺はファッションに詳しくない組の西谷とサッカーの
話しなんかしていた。
と、俺がコーラをストローで飲みながら窓の外に目を向けた時、その先に涼葉の姿をみつけた。
涼葉が都内で買い物?とちょっと意外に思ったその直後、俺は涼葉に追いつく田島の姿を見た。田島は相変わらず笑顔で話しかけると、
涼葉もそれに応えて頷いていた。並んで歩いているし、たまたま偶然そこで会った、っていう事でもない感じだった。

俺は二人が視界から消えるまでぼーっと、その光景を眺めていた。
「タカさん、どうした?」
「あ、いや、なんでも・・・」
この時の俺の頭の中ではいろんなことが渦巻いていた。本当に俺達・・・・
家に帰っても、俺は涼葉と田島が一緒にいたことが気になって仕方がなかった。一体なんで二人で?と俺は疑問に思い、それはどうしても
一つの答えに行き着いてしまう。つまり涼葉と田島がつき合っている、ってことだ。そんなのありえないとも思うんだが、俺と涼葉がつき合う
なんていうのも半年前だったら思いもしなかったし、実際奥手のようで大胆な所がある涼葉ならもしかして、という考えがつい出てしまう。
妄想は更にエスカレートして、脳裏には田島が涼葉とエッチしているシーンも浮かんできた。手が早い田島のことだし、好奇心旺盛な涼葉
だったら・・・とイヤな想像をしてしまう。涼葉を信じていないわけじゃないんだが、涼葉には謎が多いという印象も確かで、俺にとっては謎
の多い涼葉のキャラ自体が不安を煽っていた。
翌日、4時限目が終わって移動教室から戻る廊下で涼葉に声を掛けられた。
「高さん、今日のお昼一緒に食べないか?」
久しぶりの誘いだ。涼葉は俺の顔を覗きこんで可愛く微笑む。俺は一瞬嬉しさですぐオーケーの返事をしようとしたが、急にあの疑惑がもた
げてきた。ふたまたかけるつもりなのかコイツ?というような黒い気持ち。
「あ、ゴメン。今日は先約あるんだ。西谷達と学食で」
「ああ、そうだったか。突然だったからな。それではまたの機会にするよ」
涼葉は声のトーンを落として凄く気落ちした表情になった。
『冗談だよ』って言葉を出せばすぐに涼葉の笑顔がみられる、そうわかっていた。でも俺の心はすっかりネガティブに支配されていたから、
優しい言葉も出なかった。
「ゴメンな。じゃ、急ぐから」俺は早足になって涼葉を置いていった。この場にいたくないから。
それから俺は涼葉を見ないようにしていた。教室は勿論、廊下ですれ違っても目を合わせずに、俺は涼葉を無視し続けた。そんなことより
話しをしてハッキリさせればいいんだっていうのはわかる。
しかしこのときの俺は意地になっていたのか、真実を知りたくなかったのか、こんな方法でしか涼葉に接することが出来なかった。
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