翌日。昨日は結局、あのまま涼葉の姉と一緒に適当に飲み食いして帰ったのだが、まぁそれはそれなりに楽しかった。
ただ、途中で止められたのは気分的にもスッキリしないというか、寸止めは体によくないと思うので、またリベンジし
たいと思っている、俺としては。
涼葉も同じ気持ちなのかはわからないが、お姉ちゃんとは仲が良くないとかで、終始ムスッとしていた。でも逆に涼葉の
違った顔が見られ俺は面白かった。もっとつき合えば、俺にもこんな顔するのかな、とか。
教室では相変わらず秘密の関係なので、俺と涼葉は言葉を交わさない。しかし目が合うとちょっと笑顔になったりして、
それはそれなりに秘密を楽しんでいる。そして昨日の感触を思い出して、俺はニンマリするのを堪える。堪えきれず笑った
かもしれないが。外から見たら結構キモいだろうな、とか思いつつ、俺的には幸せなひとときである。
昼休み、もう何も言わなくても俺と涼葉はベンチで合流した。こういうのっていいよなぁ。もっとも昨日の話で涼葉の弁当を
予約していたっていうのもあるけど。
「すまなかったね」「なにが?」
「昨日は姉が乱入してしまって」「いいよ、別に。明るいお姉さんだし」
と言うと涼葉はキュッと口をつぐんで目をそらせた。何か怒らせたのか?
「どうした?」
「高さんはあれでよかったのか・・・」
ああ、そういうことか。
「あっ、いや、いいとか言ってんじゃないよ。そりゃ俺もその、続きっていうか、もっとちゃんとしたかったっていうか・・・」
なんか言うほど泥沼にはまりそうだったが、涼葉は微笑んで助けてくれた。
「わかった。高さんも不満だったんだ」「そ、そりゃ勿論!」
俺の慌てぶりに涼葉が吹き出した。
「高さんは正直でいいな」「なんだよそれ」
「嘘がつけないタイプだ」「それ誉めてないよな」
「いやいや、誉めてるよ」「ゼッテー嘘だ、その顔は」
「バレたか。私も嘘がつけないタイプだ」
「おーまーえーなぁ〜バカにすんなよ」
と頬を指でつつくと、涼葉は首をすくめながら笑った。いやいや、マジでかわいい・・・・(恋愛フィルター付き)。

「涼、今度の土曜か日曜暇か?」俺は考えていたことを切り出す。
「ああ、日曜なら空いてるが・・・デートのお誘いか?」
さすがに話が早い。
「ちゃんとデートしたことないし、いいかな?」
「無論問題ない。というか、誘ってくれるとは思わなかった」涼葉は本当に嬉しそうに微笑んだ。
「当たり前だろ。いや、まぁ・・・俺達つき合ってるんだし・・・」
ちょっと照れるんで俺は続ける。「どこか行きたい所あるか?」
「うーん、いきなり言われても難しいけど、こういうときベタな台詞しか思いつかないものだね」
「どんな?」
「『高さんとならどこでもいい』って台詞」自分で言っておいて顔を赤くする涼葉。
「そりゃ確かにベタだ」と言いながら俺はニヤつきが止まらない。
「じゃあなんか考えておくよ」「高さんに任せる。けどあまり遠くない所がいいな」
「ああ、その辺は心配すんな。車持ってるわけじゃないし」
「ハワイとかも無しだ」
「そうだな、ハワイはねーよな。ってか飛行機は無しだ」
と、くだらない話を続けながら俺達の心和む昼休みは過ぎていった。
午後の授業は当然のようにデート場所の選定に忙しかったのだが、こういうのを考えているのも含めてが、彼女とつき合う
ことの楽しさなんだと実感した。ほどほどにしないと成績に影響しそうだけど、そのときはまた涼葉に教わればいい。
なかなかいいプランだ。
授業が終わって放課後、廊下で涼葉を呼び止める。
「今日は一緒に・・・」「すまない。今日は生徒会なんだ。遅くなると思う」
「そうか、仕方ないな」「ごめん」
「気にすんなって。生徒会がんばれよ」「ありがとう」
他の奴もいるからさすがにキスは出来ないが、残念そうな涼葉をみて俺は頭を軽く撫でた。ビックリした表情の涼葉だったが、
すぐに優しい顔になり頷いた。
以前よりもいろんな顔をするんだなぁと俺は気づき、それは俺のせいかと思うと少し温かい気持ちになった。
涼葉とつき合うとどういう生活になるか、とか考えずにつき合い始めたわけだが、やはり涼葉は忙しく暮らしている女の子だった。
頭じゃわかっちゃいたんだが、実際よくわかったというか。
翌日、そしてまた翌日も放課後の涼葉は用事で埋まっていた。とはいっても弁当を作ってくれるし、それだけでもありがたいんだが、
やっぱりもっと話とかしたいじゃないか(メールも出来ないしな)。
あと、キスとか他にもあるんだが、それは今度のデートまでのお楽しみにしておこう。
そんなことで金曜の昼になった。
「まず謝りたい」ベンチに座るといきなり涼葉が頭を下げる。俺はイヤな予感がした。
「まさか」
「うん。デートには行かれなくなった・・・」
的中。
「なんで?」「実は塾の模試を忘れていて・・・・」
「日曜にあるのか」「うん・・・」
すまなさそうに涼葉が頷く。俺としても残念だが、『サボれよ』なんてことは言いたくない。
「やっぱり模試は・・・」「塾に行けよ。仕方ないだろ。気にするな」
涼葉はホッとしたようなそんな感じ。まぁ、言われれば確かに涼葉も嘘がつけないタイプか。
「でも残念だなぁ。楽しみにしてたんだぜ」「ごめん。私も楽しみにしていたんだが・・・」
「わかってるって」「この埋め合わせは必ず」
「ん〜どう埋め合わせるんだ?」俺はちょっと意地悪く訊く。
「ええと、高さんが喜ぶことをしたい」「俺が?どんな風に?」
「それはまだわからないが」「じゃあ俺が決めてもいいか?」
「いいけど」「激しくてもいいか?」
「あぁ、いや、痛くない程度なら」「痛くない程度にな。よし、わかった」
「高さん」「なんだ?」
「イヤラシイ顔をしている・・・」「そうか?普段通りだが」
「それなら高さんは普段からイヤラシイ人になるが」「そりゃないだろ」
「そう願いたい。つき合っている身としては」「俺は涼がイヤラシクても好きだけどな」
「別に嫌いとは言っていない」
涼葉は困ったような顔をするので、俺は頭を撫でる。涼葉は俯いて顔を少し赤らめた。
とまぁ、こんな感じになって俺としても残念だったが、また期待度が上がったのでそれで良しとしよう。
根本的に涼葉が忙しいっていうのはこれからも変わらないだろうし、そういうところは理解してやらなければいけないんじゃない
かと思う。俺の方を優先しろ、とかそんな独占欲を前面に出すのも俺のスタイルじゃないしな。
結局翌週の土曜日が空いているということで、一応予約はしておいた。さすがに二度目のドタキャンはないだろうが、あんまり期待
しすぎてダメだったらまたダメージが大きいので、俺はダメもとのつもりで待つことにした。
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