<2007.5.13>
「Blue White Wind - ブルーホワイトウインド」- 第一話

「行けっ!」並んで走る。前にはクラスメイトの足がせわしなく見える。あと一つ、俺の気持ちは前にいかない。俺はそうして失速する。
グランドに砂埃が舞う。ゴールの白線は俺が着く頃には霞んでいた・・・・
「じゃあ委員はよろしくな」担任の宮本が言ってホームルームが終了。同級生の声と椅子の鳴る音に追い出されるように俺はノートを持っ
て教室を後にした。
美化委員になったのは特に部活にも入っていなかったし、掃除は嫌いじゃなかったからだ。いや、正直に言えばボランティア委員なんか
やらされる前になんか委員になっておけばいいと思ったからだ。一番楽そうなのが文化・体育委員なんだがこっちは部活に所属していない
と入れないので、選択としてはやはりこの辺が無難なところだったろう。
廊下から校庭を見下ろすともう既に運動部員が練習を始めていた。陸上部だろうか、ハードルを運んでいるのは一年生か。5月の明るい日
差しが校庭を白く照らしている。埃と白線の匂いがゆるい風に乗って届く。カラッとしていい天気だ。走るには丁度いい・・・俺は頭を振っ
て委員会のある教室へ向かった。
委員会は一時間ほどで終了。別に大したことでもないのにいろいろ長引くのは、社会に出る前に忍耐力をつける練習なんだろうか。
ともかく俺は溜息しながらダラダラと教室に戻って歩いていた。そしてトイレに寄ってから廊下の窓から校庭をしばらくみていた。
「帰るか」と、ひとりごとなど言って俺は踏み出そうとしたが・・・・
なんとなく、というのだろうか。俺は何か気になって側の教室に目をやった。
この第三校舎は特別教室のある棟なんだが、生徒数減少の今では使われなくなった教室が結構ある。見上げるとプレートには第二化学室と
あった。ここは確か去年から使われなくなったはずだ。
耳を澄ましてみる。誰か中にいて、何か話しているようだった。俺はなんか秘密っぽさを感じた。そう、例えば使われていない教室で教師
同士の密会とか不倫とか・・・・考え過ぎか?
ともかくこのままでは話の内容が聞けなかったのでドアをそっと開けてみることにした。が、当然のようにカギが掛かっている。これはます
ますアヤシクなってきた。俺も余計に中が気になる。
棟の大教室は廊下側の壁の下に小さな引き戸がついている。エアコンが無い頃の名残の風取り用なんだろうが、それをみて思い出した。確か
去年掃除当番で第二化学室の受け持ちになったんだが、一番端の戸のカギが壊れていたはずだ。普通なら修理するんだろうが、もう使われない
し備品もないのでもしかしたらまだ壊れたままかもしれない。俺はしゃがんで、そっと戸を引いてみた・・・開いた。
隙間の中を覗いてみると、制服の男女がいた。男が女を背中から抱いて・・・女のスカートはめくられ白いふとももが見えた。男もズボンを下
ろして腰を動かしていた。なにかと思えばこんな所で・・・といいつつ俺はそのまま観ることにした。のぞきはいい趣味じゃないが、ハッキリ
言ってこんなところでしている方がいけないのだ。
「はぁはぁはぁ」
声を押し殺しているんだろうが実験机しかない広い教室なので、二人の息が響く。
男は腰を激しく動かしている。勿論俺だってAVくらい観たことはあるが、生で観るのは初めてだった。なんというか、生はやっぱり迫力が違う
っていうが、それは人のセックスでもいえる。こっそり観ているという状況が興奮を呼ぶのかもしれないが。
「ピチッ、ピチッ」男の腰が女の尻に当たって生々しい音を立てている。男も女も反対を向いてバックでしているから残念なことにほとんど男
の尻しか見えない。くそっ!体位変えろよ!・・・
ふと気配を感じ、俺は振り向く。俺は心臓が止まる、って安易な形容を引用したいくらいビックリした。
俺の隣りに津木涼葉(つきすずは)がしゃがんでいたのだ。

津木は俺と同じクラスだったがこのクラスになって約2ヶ月経った今でも、まだまともに喋った事がない女子だった。ただ、津木が生徒会書記である
こと、成績が優秀でクラスではほぼトップであることくらいは俺でも知っている。そしてまじめで教師の受けもいい優等生だということも。
「なにしてるの?」
ありがたいことに空気を読んでか津木は小声で訊ねた。が、なんと答えたものか・・・
「いや、その、なんでも・・・」
体で戸の隙間を遮ろうとする俺に構わず津木はグッと頭を下げて中を見る。息を呑むのがわかる。うわぁ〜終わった・・・・
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